新型コロナウイルス感染症の今後の見通しは
掲載日:2020年10月14日
新型コロナウイルスは2002年に出現したSARSコロナウイルス(SARS-CoV-1)と遺伝学的に極めて近く、SARS-CoV-2と命名された。因みに、SARS-CoV-2が起こす感染症をCOVID-19と呼ぶことになった。最初は未知の感染症ということで人々を恐怖に陥れたが、流行が始まって半年以上が経過し、COVID-19の本当の姿が徐々に明らかになってきた。COVID-19の今後を正確に予測することは誰も出来ないが、これまでの知見と他のパンデミックを比較することで、おぼろげながら本質が見えてきた気がする。
SARS-CoV-2の特徴の一つは、特定の環境(いわゆる3密)では非常に強い感染力を示すが、市中での感染力はそれほど強くないことである。筆者の研究所で実施しているPCR検査の結果を毎日眺めていると、そのことが実感できる。最近のSARS-CoV-2に対する抗体検査のデータでも、感染したことを示す陽性率は1%よりも遙かに低く、PCR検査の結果と大きな矛盾はない。ところが、スペインかぜ、アジアかぜなどの新型インフルエンザが出現した最初の年は、半年間で人口の約半数が感染したと言われている。毎年の季節性インフルエンザでも、日本では少なくとも一千万人以上が感染する。SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスの感染力に大きな違いはないと考えられるので、この差は何に起因するのか?一番の要因はPCR検査により、症状を呈する患者だけでなく無症状の感染者も発見し、隔離対策を取っているからだろう。検査法がなかった過去のパンデミックにおいては、感染者を見つける手段がなかったため、一気に感染が拡大した。今後はPCR検査だけでなく、抗原検出キットなどを用いた大規模検査により感染者を早く発見し、市中感染の拡大のスピードを抑え、医療崩壊を防ぐことが重要と考える。
ワクチンは世界の多くの国で競って開発され、先陣争いをしている感がある。最新の遺伝子操作技術を応用したmRNAワクチンやDNAワクチンなどは数か月もあれば開発が可能である。しかし、有効性と安全性を兼ね備えたワクチンの実用化には高いハードルがあり、これらをクリアーするには長期間を要する。特にウイルス性呼吸器感染症に対する有効なワクチンを実用化するのは困難で、楽観視はできない。どの形状のワクチンが製造承認を受けるか分からないが、それらはインフルエンザワクチンと同様、感染を防ぐ効果は低いが重症化を防ぐのに有効なワクチンとなるはずである。COVID-19との長い戦いは今始まったばかりである。
SARS-CoV-2の特徴の一つは、特定の環境(いわゆる3密)では非常に強い感染力を示すが、市中での感染力はそれほど強くないことである。筆者の研究所で実施しているPCR検査の結果を毎日眺めていると、そのことが実感できる。最近のSARS-CoV-2に対する抗体検査のデータでも、感染したことを示す陽性率は1%よりも遙かに低く、PCR検査の結果と大きな矛盾はない。ところが、スペインかぜ、アジアかぜなどの新型インフルエンザが出現した最初の年は、半年間で人口の約半数が感染したと言われている。毎年の季節性インフルエンザでも、日本では少なくとも一千万人以上が感染する。SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスの感染力に大きな違いはないと考えられるので、この差は何に起因するのか?一番の要因はPCR検査により、症状を呈する患者だけでなく無症状の感染者も発見し、隔離対策を取っているからだろう。検査法がなかった過去のパンデミックにおいては、感染者を見つける手段がなかったため、一気に感染が拡大した。今後はPCR検査だけでなく、抗原検出キットなどを用いた大規模検査により感染者を早く発見し、市中感染の拡大のスピードを抑え、医療崩壊を防ぐことが重要と考える。
SARS-CoV-2のウイルス学的な性質は、インフルエンザウイルスとSARS-CoV-1の両者の悪い面を持った厄介なウイルスのように感じる。毎年流行する季節性インフルエンザは、ウイルスが主に上気道に感染するため流行拡大のスピードは極めて速い。その反面、下気道や肺実質でほとんど増殖しないため、肺炎症状を呈することは少ない。一方、SARS-CoV-1は主に肺実質で増殖して重篤な肺炎を惹起するが、上気道での増殖力は弱く、SARSは短期間で完全に終息した。SARS-CoV-2が厄介なのは、上気道でも肺実質でも増殖することで、感染力が強い上に肺炎などを起こす能力が高い。このウイルスが消えるとはとても思えないので、インフルエンザのように今後は長く付き合っていかなければならない。高齢者や基礎疾患を持った人が重症化するというのはインフルエンザと同様で、ワクチンや治療薬の実用化が待たれる。
理事長 奥野 良信
(大阪府保険医協会発行「勤務医LETTER」No.148 2020年9月25日 より許諾を得て転載)
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