帯状疱疹患者が増えています
掲載日:2018年6月19日
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、我慢できないほどの強い痛みを伴う病気であることはよく知られています。皮膚に肌荒れのような、かぶれのような赤い発疹ができ、そのあとは水膨れが出てきます。やがてかさぶたになり、最後には赤い斑点となり、2~4週間ほどするとかさぶたが取れて治癒します。3人に1人は一生に1回の経験ですが、稀には数回かかる人もいます。
そもそも帯状疱疹の原因は、小さいときに感染したウイルスに遡ります。このウイルスは、水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus、 VZV)と呼ばれるもので、ほとんどの子供が初めて感染し、水痘(水ぼうそう)になったときの原因ウイルスです。
このウイルスはヘルペスウイルスの1つで、疲れた時に口の中にできる発疹、いわゆる口内炎の原因となる単純ヘルペスウイルスと同じ仲間です。人間に感染するヘルペスウイルスには8種類のウイルスがあることが知られています。
帯状疱疹の典型例
小さいころに感染し、水痘を起こしたVZVは、水痘から回復した後も体の中の神経細胞の中に潜み続けています。その知覚神経節に潜んでいるウイルスは、青年、そして成人になるまで体の中の免疫細胞に抑え続けられます。そして、高齢になって免疫力が落ちてくるのを待っています。免疫力が弱まり、免疫細胞による抑圧力が低下した時に暴れはじめ、ウイルスがどんどん増えてきて(再活性化)、痛みや違和感、時にはかゆみも感じられるようになり、赤い発疹が現れます。個人差もありますが、発症から2週間ぐらい痛みが続き、時には皮膚症状が治まった後も痛みが持続する場合があります。これは帯状疱疹後神経痛と呼ばれているもので、人によっては数か月から数年続くことがあります。年齢が上がるほどこのような症状を抑えている免疫力が低下していますので、帯状疱疹後神経痛を引き起こしやすくなります。
高齢者の発症要因
先に述べましたように、子供に多い水痘と高齢者(と言っても、60歳を中心に50~70歳代)に多い帯状疱疹は同じウイルスが原因ですので、このウイルスの活動には体が持っている免疫反応力が関係しています。免疫力が申し分ない状態の時期はウイルスはおとなしくして潜んでいますが、弱くなってきますと、暴れ始めます。この抗ウイルス免疫力は、体がどれだけウイルスに晒され、(免疫学的な)刺激を受けたかによって違ってきます。すなわち、高齢になっていても、近くに住む多くの子供がこのウイルスに感染してどんどん空気中に吐き出している時代には、この吐き出されたウイルスによって免疫学的な刺激を受けて、このウイルスに対する免疫力が鍛えられていました。
水痘ワクチンが定期化になり、ほとんどの子供がこのウイルスに対するワクチンを接種するようになり、今では子供が水痘になることはほとんどなくなりました。しかし、皮肉なことに、子供からの自然のワクチンとなっていた水痘のウイルスが世の中からほぼ姿を消してしまったことで、高齢者の免疫力が低下してしまいます。年齢とともに免疫力は徐々に低下していきますが、加齢によっての低下だけではなく、別の要因、たとえば過労や強いストレスなどが引き金となって急激に免疫力が低下し、それまで暴れるのを抑えていた力が及ばずに、潜んでいたウイルスが暴れ始めることになり、これが帯状疱疹の発症となるわけです。
このような背景から、2016年3月に50才以上の方を対象に自費での水痘ワクチン接種が承認されました。ワクチン接種により、免疫力が高まることで、帯状疱疹予防が期待されます。
発症してしまったら
帯状疱疹は、ほとんどの場合、体の片側だけに赤い発疹ができます。帯状疱疹にかかってしまっても、飲み薬で治療可能です。発疹とともに、強い痛みがあるときにはなるべく早く皮膚科を受診しましょう。また、身近に水痘にかかったことのない乳幼児(お孫さんなど)がおられる場合、感染させてしまう可能性がありますので、帯状疱疹の発疹を触った手でスキンシップは控えるようにしましょう。
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