毒毛虫に注意しましょう
掲載日:2020年4月2日
庭や野山で毒虫に刺されて、痛みやかゆみで困った経験はありませんか?今回は注意が必要な毒毛虫の特徴、刺された場合の処置、駆除の方法について紹介します。
代表的な毒毛虫
チョウやガの仲間の幼虫には、多少なりとも刺毛(しもう)とよばれる毛が生えています。刺毛が長いもの、密度が高いものが「毛虫」と呼ばれます。毛虫のほとんどは毒がなく、触っても問題ありません。しかし、一部の毛虫には、皮膚炎を起こすものがあります。
表:大阪周辺の毒毛虫
チャドクガ
<発生場所>カンツバキ、ヤブツバキなど。庭、公園でよくみられます。カンツバキの植栽が増えているため、大発生することが多くなっています。
<発生時期>年2回(春から初夏、初夏・盛夏から秋)。卵で冬を越します。
<特徴>
幼虫の背面に短い(長さ0.1mm)毒針毛があり、皮膚に刺さると皮疹を伴うかゆみが起こります。かゆみは何度もぶり返し、1ヶ月程度続く場合があります。
卵から成虫までの全ステージで毒針毛を持っています。さらに脱皮殻も危険であるため、年中注意が必要です。
-
チャドクガにより丸坊主になったカンツバキ
-
幹に群れる幼虫
☝さらに解説
チャドクガの毒針毛は幼虫が脱皮するたびに生え変わるため、脱皮殻にも毒針毛が残されます。幼虫は蛹(さなぎ)になるとき、まゆに毒針毛を付着させます。さらに、メス成虫は羽化するとまゆの毒針毛を腹部の毛に埋め込みます。卵は塊としてツバキに産み付けられるますが、その際メス成虫は腹部の毛と毒針毛で卵を覆います。このように、卵から成虫までの全ステージで毒針毛をもつようになっているのです。
ドクガ
<発生場所>野山に多く発生します。
<発生時期>年1回(春)。幼虫で冬を越します。
<特徴>
雑食性でさまざまな植物の葉を食べます。
チャドクガと同じように卵から成虫まで毒針毛をもち、しつこい皮膚炎を起こします。
ドクガ類の毒成分として、プロテアーゼ、エステラーゼ、ヒスタミンなどが検出されています。
ドクガの幼虫
マツカレハ
<発生場所>マツ類(アカマツ、クロマツ、ヒマラヤスギなど)に発生。都市にも野山にも生息しています。
<発生時期>年1回(春から夏)。幼虫で冬を越します。
<特徴>
体長は8 cmにもなる大型の毛虫です。
幼虫の胸の背面の黒い部分には長さ1mmの毒針毛があり、これが皮膚に刺さると、皮膚炎を起こし、2~3週間痛みとかゆみが続くことがあります。
まゆにも黒い毒針毛を付着させるので、触らないようにしましょう。
-
マツカレハの幼虫
-
マツカレハのまゆ
タケノホソクロバ
<発生場所>タケ、ササに発生します。都会の植え込みでよくみられます。
<発生時期>年2回(夏と秋)。
<特徴>
若い幼虫は葉の表面をはぎ取るように食べるため、タケやササの葉が白くなり目立ちます。
薄オレンジ色に黒い毛をもつ小型(2cm弱)の毒毛虫により、痛みとかゆみを伴う皮膚炎を起こします。
-
タケノホソクロバの食害跡
-
タケノホソクロバの成虫
ヒロヘリアオイラガ
<発生場所>サクラ、ナンキンハゼ、カキなどさまざまな樹木に発生します。都市に多くみられます。
<発生時期>年2回(夏と秋)。
<特徴>
中国南部から侵入した外来種です。
木の幹に扁平な「まゆ」をつくります。
派手できれいな毛虫ですが、体全体に毒のある棘(毒棘)をもち、後方の黒い部分には毒針毛もあります。
触れた瞬間、電撃的な痛みを感じ、数時間は嫌な痛みとかゆみが残ります。しかし、ドクガ類やカレハガ類のように皮膚炎が長引くことはありません。
ヒロヘリアオイラガの幼虫
毒毛虫の防ぎ方
植物に注意!!
毒毛虫が食べる植物はおおよそ決まっています。ツバキにはチャドクガがつくため、ツバキの茂みに入るときには気をつけましょう。縁起ものとして使われる「松竹梅」などの樹木にも、毒毛虫がよく発生します。野山に出かけるときや庭仕事をするときには、長袖・長ズボンを着用し、素肌を露出させないことが重要です。
退治するには?
毒毛虫は、園芸用品店やホームセンターなどで販売されている殺虫剤(成分名;フェニトロチオン、ペルメトリンなど)で駆除することが出来ます。なお、発生初期は集団で生活しますが、その後樹木全体に広がります。樹木全体に広がる前に、枝ごと切り取り袋にいれて処分する方法が、環境にも優しく最も効果的です。
毒毛虫に刺されたら
毒毛虫にうっかり触れてしまった….という場合は、患部を流水で洗い流し、触らないようにして、皮膚科を受診するのがよいでしょう。特に、ドクガとチャドクガに刺された場合は、注意が必要です。
近年は海外旅行で熱帯地方を訪れる方も多くなっています。中南米には人の死亡例もある毒毛虫が生息していますので注意が必要です。また、チョウ・ガの仲間にはまだ人に知られていない種が多くあります。毒毛虫は、鳥や捕食性昆虫などの天敵から身を守るために毒針毛や毒棘を発達させてきました。不用意に毛虫に触れないほうがいいでしょう。
参考資料
加納六郎・篠永哲 (2003) 新版日本の有害節足動物, 東海大学出版会
小学館の図鑑NEOイモムシとケムシ
有毒ケムシ類-ドクガとイラガ(神奈川県衛生研究所)
http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/008_topics/files/topics_040311_02.htm
北海道のドクガ(北海道立衛生研究所)
http://www.iph.pref.hokkaido.jp/topics/dokuga1/dokuga1.html
「殺人毛虫」の異名を持つ、世界最強級の猛毒ケムシ、「ベネズエラ・ヤママユガ」の幼虫(カラパイア)
お問い合わせ
電話番号:06-6972-1402