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大阪健康安全基盤研究所

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イワシによるアニサキス食中毒について

掲載日:2021年4月20日

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寿司や刺身を食べたあと、胃のあたりがしくしく痛むことがあります。寄生虫のアニサキスが胃壁に侵入したことによる食中毒かもしれません。アニサキス食中毒の原因として、最も知られているのはサバですが、イワシがアニサキス食中毒を引き起こすことは意外と知られていません。今回は、イワシによるアニサキス食中毒について紹介したいと思います。

*アニサキスについては、以下の記事でも紹介しました。合わせてご覧ください。
(生サンマにいるアニサキスに要注意 http://www.iph.osaka.jp/s009/20180927131115.html)

1.アニサキスとアニサキス食中毒について

アニサキスは海産哺乳類を終宿主(成虫が寄生する宿主)とする線虫です。海産哺乳類の糞とともに海中に放たれたアニサキスの卵は孵化後、動物プランクトン(オキアミなど)に取り込まれます。そして、動物プランクトンを餌とする魚介類には、アニサキスが蓄積していきます。海産哺乳類は、アニサキスが寄生しているオキアミや魚介類を食べることで、アニサキスに感染します。このような生活史(図1左)のため、私たちが普段食べる天然の海産魚介類には、アニサキスの幼虫(図1右)が寄生していることがあります。寄生部位は内臓や筋肉です。アニサキスが寄生している刺身や調理品を食べた数時間後、アニサキスが胃壁に侵入すると、胃痛が生じます(アニサキス食中毒)。痛みの程度は軽度から重度まで様々です。他の検査で偶然見つかるなど、自覚症状のない場合もあります。内視鏡でアニサキスを取り除けば速やかに痛みがなくなります。

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図1 アニサキスの生活史(左)と幼虫(右)(長さは2~3 cm)

2.日本のアニサキス食中毒の発生状況

食中毒の原因はカンピロバクターやノロウイルスなどたくさんあります。アニサキス食中毒の報告件数は、2016年まで、年間100件程度で推移していました。2017年頃から、芸能人の方々がアニサキス食中毒の経験談をテレビやSNSで紹介したことがきっかけとなり、広く知られるようになりました。2018年は、カツオを原因とするアニサキス食中毒が急増し、これまで件数で上位を占めていたカンピロバクターとノロウイルスを超えました。2019年以降は、カツオによるアニサキス食中毒が減少しましたが、原因別の報告件数では、アニサキスが最多を維持しています(図2: 2021年4月現在)。 

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図2 食中毒の主要病因物質別報告件数(厚生労働省食中毒統計資料に基づく)

3.大阪府におけるアニサキス食中毒の発生状況

厚生労働省食中毒統計資料によると、2013年以降、大阪府におけるアニサキス食中毒は、8年間で39件(3~7件/年)報告されています。原因食品は不明な場合が多く、刺身盛り合わせなど複数の魚種を食べた場合、原因魚種の特定は、さらに困難となります。大阪府内で原因食材を特定できた事例は39件中8件であり、しめサバやカツオたたき醤油漬けも事例として挙げられています。魚を酢でしめても、醤油漬けにしても、筋肉に寄生しているアニサキスは死なない場合もあることがわかります。

4.原因魚種の変遷とイワシによるアニサキス食中毒

国内で発生したアニサキス食中毒の原因魚種は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシなどが知られています。この中でイワシは2013年~2019年の上位5種に入っています。イワシを原因とするアニサキス食中毒(推定を含む)は、2013年~2020年で37件発生しており、刺身(23件)や酢を使った料理(6件)などが含まれています。イワシの中でも、マイワシは近年漁獲量が増えており、刺身や寿司での消費が増えた場合、マイワシを原因とするアニサキス食中毒の増加が懸念されます。

大安研では、2017年11月から大阪府内で販売されているマイワシについて、アニサキスがどれくらい寄生しているのかを調べています。800尾以上の様々なサイズのマイワシについて調査した結果、アニサキスの寄生率は約1%でした。アニサキスは、15 cm以上の大きめのマイワシから見つかる傾向にありました。アニサキスの大部分はマイワシの内臓に寄生しており、筋肉(可食部)における寄生率は0.2%でした。アニサキスの寄生率が低いとはいえ、過去にはもう少し高い寄生率も報告されているため、広く流通し生食されていることを考慮すると、マイワシを原因魚種として認識しておくべきと考えられます。大きめのマイワシを生食する場合には、十分に冷凍することが望ましいでしょう。

参考HP

厚生労働省食中毒統計資料(2021年4月閲覧)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html

お問い合わせ

微生物部 ウイルス課
電話番号:06-6972-1402