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大阪健康安全基盤研究所

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Q:犬の狂犬病ワクチンってホンマに必要なん? A:必要かつ飼い主の義務です!

掲載日:2021年9月17日

○狂犬病とは

狂犬病は狂犬病ウイルスを原因とする人獣共通感染症の一つです。狂犬病ウイルスは、人を含む全ての哺乳類に感染します。

狂犬病ウイルスは特徴的な弾丸状の形をしています。狂犬病を発症した動物の唾液中には狂犬病ウイルスが存在します。噛みつきなどによって、傷口からウイルスが体内に侵入し(図1 - 1)、潜伏します。潜伏する期間は平均して1ヶ月程度であり、長いものでは8年の記録も報告されています(図1 - 2)。その後、狂犬病ウイルスは中枢神経系の脊髄および脳にまで感染を拡大し、狂犬病を発症させます(図1 - 3)。

人が狂犬病を発症すると、飲み込む際の苦痛により水が飲めなくなる恐水症、体の麻痺・震え、幻覚、不安感、ならびに錯乱などの症状を示します。感染してから発症するまでの間に適切なワクチン接種を行うことにより狂犬病の発症を阻止できる一方、一度発症してしまうと治療法は存在せず致死率はほぼ100%です。いまだに世界で毎年約6万人が狂犬病により死亡しています

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○感染拡大への対策

実は人が狂犬病ウイルスに感染する事例の99%が犬による噛みつきを原因としています。したがって、狂犬病の撲滅のためには犬への対策が重要になります。その対策の一つが飼い犬への狂犬病ワクチン接種です。ワクチンを接種した犬は狂犬病ウイルスに対する抗体(免疫)を得て、狂犬病の発症を防ぐことができます。さらにある集団において一定割合以上の犬が抗体を持つことにより、その集団における狂犬病ウイルスの感染拡大を防ぐことができます(いわゆる集団免疫です)(図2)。そしてそれは同時に人への狂犬病ウイルスの感染も防御できることに繋がります。過去のWHO(世界保健機関)による発表には、集団内の70%のへのワクチン接種が狂犬病の蔓延を阻止するのに必要であると記されています。実際、狂犬病の犠牲者の大半が、犬へのワクチン接種が進んでいない発展途上国において発生しています。一方、犬へのワクチン接種が進んでいる先進国では、犬由来の狂犬病はほとんど問題にならず、野生動物(アライグマ、スカンク、コウモリなど)由来の感染がほとんどです。

 

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○日本における狂犬病の状況と対策

では日本における狂犬病はどうでしょうか。現在、日本国内において人では1956年、動物では1957年を最後に狂犬病は発生していません。1950年に施行された狂犬病予防法により、飼い犬の登録、ワクチン接種の義務化(毎年1回)、ならびに野犬の抑留等を徹底したことが大きく貢献しています。しかしながら、周辺のアジアの国々では狂犬病は依然として発生しています。これまで日本においても、海外で狂犬病ウイルスに感染し日本へ入国後発症する輸入症例が数件発生しており、最近では2020年に14年ぶりの報告がありました。

日本と海外間における人流や物流が容易となった現在では、輸入症例に限らず感染症の侵入は非常に大きな問題です。狂犬病予防法および感染症法により感染源になり得る動物の輸入は厳しく管理・制限されています。しかし、サルやコウモリなどの密輸事例が発生し、税関による差し止めも報告されていることから、狂犬病ウイルスが国内に侵入するリスクはゼロにはなり得ません。万が一狂犬病ウイルスが国内に侵入した際に感染拡大を阻止するためには、狂犬病ウイルスに対する集団免疫を維持していく必要があります(図2)。毎年の狂犬病ワクチン接種は、飼い犬を守り、かつ日本における狂犬病ウイルスの感染拡大を未然に防ぐための対策なのです。

 

○最後に

「毎年せなあかんの?」

「飼い犬が可哀想やからまあええか!」

「節約や節約!」

狂犬病ワクチン接種への疑問を持たれる方も多いかもしれません。しかしながら、飼い犬の登録、ならびに狂犬病ワクチン接種は法律で定められた飼い主の義務であり、守らなければ刑罰の対象となってしまいます。つまり、犬への狂犬病ワクチン接種は「避けては通れない道」なのです。なにより、飼い犬のため、また日本での狂犬病の発生を今後も防ぐために、毎年の狂犬病ワクチン接種をしっかり行いましょう!

お問い合わせ

微生物部 ウイルス課
電話番号:06-6972-1402