肺炎球菌のワクチンについて
掲載日:2019年2月8日
肺炎球菌は、ヒトの口腔内や気道に常在している細菌です。免疫力の低下した高齢者や乳幼児の場合、肺炎球菌が肺炎、髄膜炎、中耳炎などの感染症の発症要因となることがあります。治療は抗菌薬の投与によって行いますが、髄膜炎を発症した場合には後遺症が残ることがあるため、できるだけはやい段階で治療を開始することが重要です。
近年、世界的に抗菌薬が効きにくいペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)等の薬剤耐性菌が増加しているため、ワクチンによる予防が重要視されるようになりました。日本においても、小児と65歳以上の高齢者を対象に肺炎球菌ワクチンが定期接種化されています。
ワクチンの種類について
肺炎球菌には、その菌体表面の違いにより97種類以上の型(血清型)があることがわかっており、現在の肺炎球菌ワクチンはそのうち病気を引き起こしやすい血清型に対して効果があるように作られています。ワクチンには大きく分けて以下の2つの種類があります。
莢膜多糖体ワクチン
肺炎球菌の表面にある物質(莢膜多糖体)をターゲットとしたワクチンで、23種類の莢膜多糖体に対応しています。このワクチンは乳幼児では十分な免疫を得ることができず、2歳以上の免疫不全者や高齢者が主な対象となっています。国内への導入は1988年からで、高齢者の肺炎において予防効果が認められたことが国内の研究でも報告(引用文献1)されています。また、インフルエンザウイルス感染者に合併する肺炎の予防効果も期待されています。
結合型ワクチン
莢膜多糖体とキャリア蛋白とを結合させたワクチンで、莢膜多糖体ワクチンが効かない乳幼児でも予防効果が得られるように開発されました。現在、国内で流通している結合型ワクチンは、病気を引きおこしやすい13種類の莢膜多糖体をターゲットとした13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)です。生後2ヶ月~9歳までが対象でしたが、現在は高齢者(65歳以上)も接種可能となっています。海外では2000年頃からこの結合型ワクチンの導入が進み、重篤な肺炎球菌感染症が著しく減少したなど、高い予防効果と安全性が認められています。
ワクチンの接種について
高齢者(65歳以上)
定期接種として、下記の年齢で過去に受けたことない方が莢膜多糖体ワクチンの接種を受けることができます(接種率を高めるため、2018年度までの暫定的な対象年齢の拡大措置が2023年度まで延長されました)。
- 2023年度まで:各年度で65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方
- 2023年度以降:各年度で65歳になる方
また、任意接種として莢膜多糖体ワクチンを5年ごと、または結合型ワクチンを1回受けることができます。
小児
定期接種として、結合型ワクチンの接種を受けることができます。生後2ヶ月~1歳の間に3回、追加として3回目の接種後60日以降にもう1回接種します(その他のワクチンも含めた小児のワクチン接種スケジュールは引用文献2)。
肺炎球菌ワクチンの定期接種の詳細については、自治体により制度が異なる場合がありますので、最寄りの保健所へお問合わせください。また、任意接種については、かかりつけの医療機関でご相談ください。
ワクチンの効果と今後の課題
ワクチンの普及により、小児では髄膜炎や菌血症など重症な肺炎球菌感染症が、高齢者でも肺炎が減少し、これらワクチンの効果が確認されています。しかし、小児を中心にワクチンに含まれない血清型の肺炎球菌が増加しており(血清型置換)、現在のワクチンのままでは将来的に肺炎球菌感染症が増加する恐れがあります。今後、すべての血清型に効果があるような次世代型ワクチンが開発されることが望まれます。
引用文献
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