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大阪健康安全基盤研究所

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ブドウ球菌食中毒の原因菌は黄色ブドウ球菌だけではありません

掲載日:2018年3月26日

ブドウ球菌食中毒はブドウ球菌エンテロトキシン(SE)を原因とする細菌性食中毒で、細菌が産生するSEを食品とともに摂取することで発症します。ほとんどのブドウ球菌食中毒では黄色集落を形成する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus;図1)が産生するSEが原因となります。図1. コロニー写真

図1. 食中毒検査で分離した白色ブドウ球菌(白色集落)と典型的なS. aureus(黄色集落)の食塩卵黄寒天培地上での集落の写真。


私たちは大阪府内で発生したブドウ球菌食中毒の検査において、色素非産生で白色集落を形成するブドウ球菌を原因菌として分離しました(図
1)。この原因菌について詳細に解析したところ、S. aureusに近縁のS. argenteusであることが明らかになりました。分離されたS. argenteusは複数のSE遺伝子を保有しており、このうちSEB遺伝子は可動性遺伝因子の1つであるS. aureus pathogenicity islandSaPI)上に存在していました(図2)。本菌が保有するSEB遺伝子の塩基配列はS. aureusで報告されているSEB遺伝子のものと完全に一致したことから、本菌はS. aureusから遺伝子水平伝播によりSaPIおよびSEB遺伝子を獲得した可能性が考えられました。
図2.PCR結果

図2. 2014年と2015年に発生した食中毒事例由来のS. argenteus菌株(SA14-23とSA15-03)のSaPI の各挿入可能領域(8’、9’、18’、19’、44’、49’)におけるSEB遺伝子検出PCRの結果。両菌株ともに18’の挿入可能領域においてSEB遺伝子のPCR産物(白色バンド)が検出されたことから、この領域にSEB遺伝子が存在していることがわかりました。M, 100bpラダーマーカー; G, ゲノムDNA(陽性コントロール); N, 陰性コントロール。Wakabayashi Y. et al. (2018) Int. J. Food Microbiol. 265:23-29から引用。

2015
年に新種として登録されたS. argenteusは、これまで皮膚軟部組織感染症の原因菌になることが報告されていましたが、本菌の食中毒起因性についてはほとんど研究されていません。本研究の成果はこれまで食中毒原因菌として着目されていなかったS. argenteusがブドウ球菌食中毒を起こしうることを示しています。本研究をきっかけとしてS. argenteusが新規食中毒原因菌として着目されることで、これまで明らかにされていない本菌による食中毒の実態が解明されることが期待されます。

 

本研究成果は、科学雑誌『International Journal of Food Microbiology』の20181月号に掲載されました。

Wakabayashi Y., Umeda K., Yonogi S., Nakamura H., Yamamoto K., Kumeda Y., Kawatsu K. (2018) Staphylococcal food poisoning caused by Staphylococcus argenteus harboring staphylococcal enterotoxin genes. Int. J. Food Microbiol. 265:23-29

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微生物部 細菌課
電話番号:06-6972-1368