知って予防しよう!動物由来感染症 ―猫ひっかき病―
掲載日:2019年10月11日
動物由来感染症とは
感染症には、麻しんやポリオのように人間にしかかからないもの、猫エイズのように動物にしかかからないものがあります。また、蚊、ダニ、野生動物やペットから人間に感染する動物由来感染症があり、世界中で200種類以上が報告されています。この中にはエボラ出血熱や狂犬病といった、感染すると高い割合で死に至るものも含まれますが、国内では、狂犬病対策、家畜衛生対策が行われてきたことや、地理的要因から、このような動物由来感染症は多くありません。
一方、ペットなどの動物から感染する病原体は、案外身近に存在しています。これらの病原体は、人の体内に入っても発症しないか、軽症ですむことがほとんどです。しかし、抵抗力の弱い子どもや高齢者などではまれに重い症状を引き起こすことがあります。適切に予防するため、まずは病気について正しく知ることが大切です。今回は、猫から感染する「猫ひっかき病」を取り上げます。
「猫ひっかき病」とは?
大まかに言うと、読んで字のごとく「猫にひっかかれてうつる病気」です。猫にひっかかれたり咬まれたりした傷口から「バルトネラ・ヘンセレ」という細菌が入り、発熱、頭痛、全身倦怠感、リンパ節の腫れなどの症状を引き起こします。患者数に関する統計はありませんが、国内で年間1~2万人の患者が発生している可能性も指摘されています。ほとんどは軽症で自然に治りますが、まれに心内膜炎や脳炎などが見られることもあります。この細菌は、猫には病気を起こしませんが、猫同志での喧嘩や「ノミ」による媒介等により猫の間で伝播していると考えられています。
写真:バルトネラ・ヘンセレの血液寒天培地上でのコロニー
保菌状況は?
大安研では平成29年度より、大阪市動物管理センターと共同で、収容された猫におけるバルトネラ・ヘンセレの保菌状況を調査しています。これまでに、調査した猫151匹中、15匹(10%)がバルトネラ・ヘンセレを保菌していました。また、飼い主のいない仔猫やノミがついている仔猫に保菌率が高いことが分かってきました。どのような猫に菌がいるのかを詳しく調べることで、効果的な予防対策を提案し、人と動物の共通感染症の啓発活動に活用できるよう、現在も調査継続中です。
予防するには?
まずは猫に引っかかれたり咬まれたりしないことです。猫による外傷を受けた時は、傷口をよく洗って消毒しましょう。数日後、傷口が腫れてきたり体調が悪くなったりした場合は、医療機関に相談しましょう。症状を軽くするために抗菌薬を使う場合もあります。猫に対しては、こまめな爪切りやノミの駆除などの衛生管理が効果的です。特に野外で生活していた猫を飼うときには注意しましょう。
猫ひっかき病は、特に15歳以下の子供に多く発生することが知られています。子供は大人に比べて病原体への抵抗力が弱く、また、不用意に猫に近づいたりすることがあるためと思われます。見知らぬ猫とは適切な距離を置き、飼い猫にも節度ある接し方をすることが大切です。
参考資料
動物由来感染症・厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou18/index.html
吉田博.-Zoonosis各論- I. 犬・猫の咬掻傷感染症. 猫ひっかき病の臨床.Zoonosis協会編.http://zoonosis.jp/docs/oh_08.pdf
丸山総一.猫ひっかき病.モダンメディア.50(9): 203-211, 2004. http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0409-01.pdf
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https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000020313.html
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