知って予防しよう!動物由来感染症 ―カプノサイトファーガ感染症―
掲載日:2020年1月7日
1.ペットと動物由来感染症
現在、国内ではペットとして約890万頭の犬、約960万頭の猫が飼育されています(ペットフード協会)。
身近な存在であるペットですが、ペットから咬まれたり、引っかかれたりすることにより、感染する病気(動物由来感染症)があることをご存知ですか?
以前、猫に引っかかれて感染する「猫ひっかき病」を紹介しました(https://www.iph.osaka.jp/s009/20191011134354.html)が、今回は、犬や猫から感染する「カプノサイトファーガ感染症」を紹介します。
2.「カプノサイトファーガ感染症」とは?
犬や猫の口腔内には「カプノサイトファーガ属菌」という細菌が常在しています。この細菌が咬み傷や引っかき傷などの傷口より人の体に入り増殖すると、「カプノサイトファーガ感染症」を引き起こします。
発熱、倦怠感や頭痛などの症状があらわれますが、多くの場合は自然に治癒します。しかし一部の症例では重症化し、救急医療が必要な全身症状(敗血症や髄膜炎、播種性血管内凝固症候群等)に進行する場合があります。
これまでに報告されている患者数は、犬や猫から外傷を受けた人数と比較して非常に少ない(国内約100例、世界約500例)ため、感染から発症に至るのは、極めて稀なケースと考えられます。
したがって、日常生活で動物との接触を過度に恐れる必要はありません。
カプノサイトファーガ・カニモルサスのグラム染色像。
長細い形をしています。
3.保菌状況は?
カプノサイトファーガ属菌の中で人に病気を引き起こすのは、大半が「カプノサイトファーガ・カニモルサス」という種類の細菌です。
大安研では大阪市動物管理センターと共同で、収容された犬や猫の保菌状況を調査しました。その結果、犬の約70 %、猫の約55 %がカプノサイトファーガ・カニモルサスを保菌していました。
さらに、犬や猫の年齢、健康状態、生活状況(ペットとして飼育されていたか野外で生活していたか)等に関わらず、どのような犬や猫も保菌していることがわかりました。
4.犬や猫から外傷を受けた時は?
カプノサイトファーガ感染症は、小さな傷口からでも感染するのが特徴です。犬や猫から外傷を受けた時には、傷口を石けんと流水でよく洗いましょう。カプノサイトファーガ感染症は急激に重症化する場合があることから、犬や猫と接触した数日後(多くは2~3日後)、発熱や頭痛に引き続く意識障害等の症状が見られた場合は、すぐに救急病院を受診しましょう。また、犬や猫による外傷を受けたことを医療機関に伝えることは、適切な治療を受ける助けになります。
動物由来感染症全般に言えることですが、感染予防に重要なのは、節度のある動物との触れ合い、ペットの衛生管理、触れ合った後の手洗いなどの基本的なルールを守ることです。そして、動物由来感染症について正しく知ることで、万が一の時にも適切に対応することができます。
5.参考資料
- 平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査結果(一般社団法人ペットフード協会)https://petfood.or.jp/topics/img/181225.pdf
- カプノサイトファーガ感染症に関するQ&A(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/capnocytophaga.html
- 動物由来感染症ハンドブック2019(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/all_low.pdf
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