温めなおしても防げません! ~「やっつけられない」食中毒 ~
掲載日:2023年8月17日
食卓に置きっぱなしにした料理を「火を通せば大丈夫!」と口にしたことはないでしょうか?ブドウ球菌やセレウス菌が増殖していた場合、アツアツに温めなおしても食中毒の原因となる可能性があるので、注意が必要です。これらの細菌は、食品中で増殖すると熱に強い毒素(耐熱性毒素)をつくります。温めなおした料理でも食中毒になってしまうのは、この耐熱性毒素が原因です。
ブドウ球菌、セレウス菌による食中毒
ブドウ球菌による食中毒の原因食品には、おにぎり、お寿司、弁当、生菓子(シュークリーム)などがあります。欧米では、牛乳や加工乳、チーズなどの乳製品も報告されています。ブドウ球菌はヒトの髪や皮膚に常在し、環境中にも広く存在しています。このため、素手で調理加工する食品が原因となりやすいのが特徴です。近年、市販食品については製造工程の管理が進み、食中毒事例は減少していますが、災害時の避難所で発生したこともあります。国内の大規模食中毒事件としては2000年に発生した低脂肪乳を原因とする事件で14,000人を超える患者が発生したのが有名です。
セレウス菌による食中毒の原因食品には、焼飯、ピラフ、オムライス、スパゲッティなどがあります。土壌細菌であるセレウス菌は、米や麦等の農産物に広く分布しています。このため米飯や麺類が原因食品になりやすいのが特徴です。セレウス菌による食中毒は、発生件数や患者数は少ないものの、ごく稀に肝障害や脳症を発症し、死に至るケースがあるので注意が必要です。
食中毒を防止するために
食中毒予防の基本は、細菌を食品に「つけない」、食品に付着した細菌を「増やさない」、食品や調理器具に付着した細菌を「やっつける」ことです。手指の消毒やラップ・使い捨て手袋の利用など、調理の際は細菌を食品に「つけない」工夫をしましょう。すぐに食べない場合は、食品に付着した細菌を「増やさない」ために、冷蔵庫や冷凍庫での保存を心がけることが重要です。ブドウ球菌やセレウス菌による食中毒は、暑さが落ちつく9月中旬から10月でも、夏場と同程度に発生しています。涼しくなったから大丈夫と油断せずに、すぐに食べない場合は冷蔵庫や冷凍庫に保存してください。一方、温めなおしでは、食品中で増殖したブドウ球菌は「やっつける」ことはできても、セレウス菌はかたい殻におおわれた耐熱性の芽胞を作って生き残ることもあります。いずれの場合もそれまでに食品中につくられた耐熱性毒素を「やっつける」ことはできません。温度管理が難しい場合は、思い切って廃棄することをお勧めします。
関連リンク
大阪健康安全基盤研究所「食中毒、梅雨の時期は要注意です!」
大阪健康安全基盤研究所「侮ってはいけないセレウス菌食中毒 」
厚生労働省「家庭での食中毒予防」
厚生労働省「大規模食中毒事件の原因究明調査結果について」
農林水産省「食中毒の原因と種類」
大阪府「食中毒菌は熱に強い?」
公益財団法人日本食品衛生協会「黄色ブドウ球菌食中毒」
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