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大阪健康安全基盤研究所

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保存料について正しく知ろう!

掲載日:2019年9月24日

近年、「保存料無添加」や「保存料不使用」と表示された食品を目にすることが多くなっています。「保存料=悪者」のイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか?今回は、保存料について詳しく解説します。

 

保存料とは

保存料は食品添加物の1つです。食品添加物とは、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものです。保存料のほか、調味料、着色料、酸化防止剤など、様々な種類があります。安全性はもちろん、その“有用性”が科学的に評価され、厚生労働大臣に認められたものだけが、食品添加物として利用されています。ちなみに豆腐に使用されている「にがり」やクッキーに使用されている「ベーキングパウダー」も食品添加物の仲間です。
では、本題に入りましょう。保存料にはどのような有用性があるのでしょうか? 
お腹が痛い男の子のイラスト

保存料の有用性は、ズバリ【食品の安全を守る】ことです。具体的には、「食品中の微生物の増殖を抑える役目」を果たしています。食品中で微生物が増殖した場合、食品の腐敗・変敗の原因となります。微生物の中には、食中毒の原因となるものもあり、これらが増殖した場合は、食中毒のリスクが高まります。保存料には殺菌効果はありませんが、「食中毒の原因となる微生物を増えにくくする、増やさないようにする効果」があり、“食中毒リスクの低減”に役立っています。その他、保存性が高まることにより、食品の広範囲な輸送や廃棄の低減にも効果があります。
つまり、保存料はその安全性に加え、食品の安全を守るという有用性が科学的に評価されているのです。


こんなデータも
悪玉細菌のイラスト

菌を添加したかまぼこを10℃で保存した場合、時間の経過とともに菌が増加して、およそ60時間後には食中毒発生の恐れがある水準に到達しますが、保存料(ソルビン酸)を添加した場合は140時間たっても菌が大きく増えません。
またウィンナーソーセージに使用した場合は使用していない場合と比較して有効保存時間が5倍長くなる等のデータもあります(注1)。 



代表的な保存料には、以下のようなものがあります。

  • ソルビン酸とその塩類
    安全性が高く、国内でも古くから保存料として使用されてきた。バラ科であるナナカマドの未成熟果汁中に含まれています。ソルビン酸の名前はナナカマドの学名Sorbus commixtaが由来です。
  • 安息香酸とその塩類
    1875年に静菌作用(細菌の発育や増殖を抑制する作用)があることが認められ、国内でも古くから保存料として使用されています。
  • プロピオン酸とその塩類
    カビ類に効果を示しますが、酵母には効果を示しにくいため、パンや洋菓子に使用されています。
  • ナイシン
    乳酸菌が作る抗菌ペプチドです。食肉製品、チーズ、ホイップクリーム等に使用されています。

 

法律に基づく規制について

食品衛生法

保存料は、科学的な評価に基づき安全性が確認されており、人が一生毎日摂取し続けても健康に影響しない量「一日摂取許容量(ADI)」を元に使用できる食品、使用できる量(使用基準)が設定されています。これら食品ごとの使用基準は、食品衛生法によって規制されています(図1)。
また、使用が認められた後も、毎年国民一人当たりの摂取量の調査が行われるなど、安全確保に努めています。最近の調査結果では、実際の摂取量は、一日摂取許容量を大きく下回っており、安全性の問題はないと考えられています(注2)。

 

一日摂取許容量(ADI)と使用基準の設定

食品表示法

保存料は食品添加物であるため、食品に使用した場合は、原則、すべて表示しなくてはなりません(食品表示法)。表示は、物質名で表示することが原則ですが、分かりやすく表示するため、一部については「簡略名・類別名」での表記することも認められています。また、その用途名も併記しなければなりません(図2)。

 

図2:保存料の表示例
その他の食品添加物の表示方法については消費者庁HPを参照ください(注3)。

当所での取組
当所では大阪府内に流通する加工食品を対象に保存料の検査を実施しています。近年では食品衛生法で定められた基準値を超過して添加されていた事例あるいは、食品表示法に違反するような使用できない食品に添加されていた事例はほとんどありません(注4)。

 

微生物の増殖を抑えるメカニズムとは?

保存料には食品中の微生物の増殖を抑える効果があります。最後にそのメカニズムについて説明します。保存料には、酸性が強い食品で効果を発揮する「酸型保存料」と、食品の酸性度に左右されず効果を発揮する「非酸型保存料」の2種類があります。酸型保存料としては、ソルビン酸、安息香酸、プロピオン酸などがあり、非酸型保存料としては、ナイシンなどがあります。 

  • 酸型保存料の作用メカニズム(ソルビン酸の例:図3)
    食品中のソルビン酸の存在形態には、分子型とイオン型があります。食品の酸性度が高い場合、ソルビン酸は主に分子型で存在します(1)。分子型のソルビン酸は、細菌の細胞膜を通りやすく、微生物の細胞内に入り込みます(2)。細胞内に入ったソルビン酸は、微生物の増殖に重要な代謝作用をブロック(阻害)し(3)、静菌作用を発揮します。

  • 非酸型保存料の作用メカニズム(ナイシンの例:図4)
    ナイシンは、微生物の細胞膜に穴をあける作用があります。穴があいた箇所からは、微生物が生きていくために必要なアミノ酸などが流れ出してしまいます
 
保存料の種類によりメカニズムに違いがありますが、上記のような作用により、保存料は食品中の微生物の増殖を抑制する効果を示します。

図3と図4:保存料の作用メカニズム

 

おわりに

保存料は、科学的検証に基づき安全性と有用性が確認されており、摂取状況も管理されています。従って、保存料を使用した食品に関して不安を抱く必要はありません。当所では今後も大阪府内に流通する加工食品を対象とした保存料の検査業務を実施し、皆様の食の安全の確保に貢献していきたいと思います。



(注1)食品安全委員会:リスクコミュニケーションのあり方に関する勉強会、会議資料(外部サイトへのリンク)
( URL: https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20140924ik1 )

(注2)厚生労働省ホームページ:マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査(外部サイトへのリンク)

( URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/
syokuten/sesshu/index.html )

(注3)消費者庁HP:食品表示法等(外部サイトへのリンク)
( URL: https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/ )

(注4)大阪府HP:食品衛生監視指導計画に基づく検査結果(外部サイトへのリンク)
( URL: http://www.pref.osaka.lg.jp/shokuhin/kanshikeikaku/kennsakekka.html )


参考資料



  • 西宮 隆. 食品添加物の有用性と安全性 vol.03「保存料,日持向上剤,防かび剤」. 月刊フードケミカル, 2019, 35 (6), 10-15

  • 小磯博昭. 主要な保存料・日持向上剤の抗菌メカニズム ―どこまで解明されているか?. 日本食品微生物学会雑誌. 2014, 31(2), 70‒75.

  • 日本食品添加物協会・暮らしの中の食品添加物編集委員会編「新訂版=よくわかる暮らしの中の食品添加物」光生館



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