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大阪健康安全基盤研究所

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液状調味料・食用油用リサイクルペットボトルの安全性を評価しました~共同研究のご紹介~

掲載日:2022年8月17日

私たちの生活に欠かせないペットボトル

ペットボトルは、お茶やジュースなどの飲料や、液状調味料や食用油、酒類のボトルとして広く使用されています。ペットボトルは、石油を原料とするプラスチックの一種です。軽く、透明で中身を確認することができ、落としても割れないなど多くの利点があります。

 一方で、近年、海洋へのプラスチックごみの流出が世界的な問題となっています。このままでは 2050 年までに魚の重量を上回るプラスチックが海洋環境に流出することが予測されています。さらに、日本ではワンウェイ(使い捨て)の容器包装の廃棄量が世界で2番目に多いことも指摘されており、プラスチックの3R(リデュース、リユース、リサイクル)+Renewable(図1)を一層推進することが求められています(注1)。

 リサイクルPET 図1

  

ペットボトルはリサイクルされているの?

日本におけるペットボトルのリサイクル率は88.5%と高く、世界最高水準となっています(注2)。主にシート(食品用・工業用トレイ等)、ペットボトル、繊維(衣類等)などにリサイクルされています。食品用の使用済みペットボトルをリサイクルし、新たな食品用ペットボトルにすることを“ボトルtoボトル”と言います。

 

“ボトル to ボトル”とは?

主にメカニカルリサイクル(物理的再生法)と呼ばれる方法により作られています(図2)。メカニカルリサイクルは、回収された使用済みペットボトルから、汚れのひどいボトルや異物などを除いた後、粉砕し、温水・アルカリ水・洗浄剤等により洗浄後、減圧下で高温処理して汚染物の除去と物性の回復を行い、フレークやペレットにした後、リサイクルボトルを作る方法です。このボトルを飲料や酒類に使用する際の安全性については既に検証済みであり、実際に一部の飲料等にリサイクルボトルが使用されています。しかし、さらなるリサイクル促進のために、他の食品のボトルにも使用を広げていくことが望まれていました。

 リサイクルPET 図2

 

リサイクルボトルを液状調味料・食用油へ!

液状調味料や食用油は、飲料や酒類とは内容物の性質や製造工程、賞味期限等の条件が異なります。そこで、リサイクルペットボトルを液状調味料や食用油用のボトルとしても使用していくために、大阪健康安全基盤研究所は、株式会社Mizkan、キッコーマン株式会社、キユーピー株式会社、日清オイリオグループ株式会社と共同研究を行い、液状調味料・食用油用リサイクルペットボトルの安全性を検証しました(注3)。その内容の一部をご紹介します。

メカニカルリサイクルでは、食品用の使用済みボトルが材料として使用されます。ボトルには元々充填されていた食品成分が残留しています。また、ペットボトルの使いやすさから、使用後のボトルに食品以外のもの(農薬や洗剤など)が保存されていた場合には、有害・有毒な成分がボトルに残留している恐れも考えられます。これらの成分が、リサイクルされたボトルに残存し、食品に溶け出して人の健康に害を及ぼすことがあってはいけません。そのため、リサイクルの工程では可能な限り汚染物質を除去することが必要です。

そこで、(1)メカニカルリサイクルの工程で汚染物質がどの程度除去されるか、(2)汚染物質が食品(液状調味料・食用油)に溶出して人の健康に害を及ぼす恐れがないか検証するために“代理汚染試験”を行いました。

 

代理汚染試験とは?

代理汚染試験は、厚生労働省や米国FDAが再生プラスチック材料を食品用ボトル等の器具・容器包装として使用する際に、その安全性を試験するために示した手法の一つです(注4)。

回収されたペットボトルに残存する可能性のある化学物質は多岐にわたります。また、予測できない化学物質が含まれる可能性もあり、その全ての化学物質についてボトルへの残存や食品への移行の有無を検証することは現実的ではありません。そこで、様々な物理化学的性質(極性、揮発性など)をもつ化学物質をいくつか選定して代理汚染物質とします。それらで意図的にペットフレークを汚染し、実際のメカニカルリサイクル工程で処理(洗浄等)してリサイクルボトルを作製します。このリサイクルボトルに残存する代理汚染物質の量を測定したり、食品にどの程度移行するか検証するために食品擬似溶媒(食品の代わりに試験に用いる溶媒)への溶出量を測定するのが“代理汚染試験”です。安全性の判断基準として、食品擬似溶媒への溶出量が0.01 ppm10 ppb)以下であれば食品への移行量は十分低いと判断します(注4)。

なお、0.01 ppmとは、食品擬似溶媒100 g(水であれば100 ml)中に化学物質が0.000001 g溶出していることを意味します。

 

安全性を検証するための研究方法のご紹介

本研究の流れを図3に示しました(注5)。代理汚染物質としてトルエンやベンゾフェノンなど物理化学的性質が異なる8物質を選定しました。これらを高濃度に溶かした溶媒にペットフレークを40℃で2週間漬け込み、汚染フレークを作製しました。汚染フレークを1%の割合で汚染していないフレークに混合し、実際のメカニカルリサイクルで処理(洗浄等)して検証用のリサイクルボトルを作製しました。この検証用ボトルは、液状調味料や食用油用ボトルとして容量の小さいボトルを使用する場合があることや、加熱殺菌した中身を高温で充填する場合があることから、小容量ボトルや耐熱ボトル等としました。

食品への移行量を試験するための食品擬似溶媒は、液状調味料や食用油の特性に合わせて、以下のように選定しました。

・食酢等の酸性食品:4%酢酸

・醤油やだし等の弱酸性~中性食品:水

・みりんや料理酒等のアルコールを含む食品:20%エタノール

・食用油等の油脂性食品:ヘプタン

また、溶出試験の試験条件は、液状調味料の賞味期限が最大2年であることから、252年に相当する405ヶ月(加速試験条件)を設定しました。

 リサイクルPET 図3

 

安全性の検証結果は?

食品擬似溶媒を用いた溶出試験の結果、試験した全ての代理汚染物質はいずれの溶出条件でも0.01 ppm未満であり、厚生労働省が示した安全性の判断基準を満たしました。さらに、0.01 ppmより低い濃度で溶出しているかを確認するために、溶出量を予測するソフトウェアを用いて溶出量を推定しました。その結果、推定溶出量は405ヶ月で最大0.0005 ppm252年で最大0.0004 ppmと低く、さらに、通常では考えられないような長期間である2510年においても最大0.001 ppmと、0.01 ppm を大きく下回っていました。

以上の結果より、メカニカルリサイクルにより再生されたリサイクルボトルは、厚生労働省の指針(注4)を十分に満たし、液状調味料や食用油のボトルとして安全に使用できることを本研究において確認しました。

 

実際の使用へ

この研究成果によって、液状調味料や食用油の容器にメカニカルリサイクルにより再生されたペットボトルを適用することができ、資源の循環促進に寄与すると考えています。

持続可能な社会の実現に貢献していくために、リサイクルをさらに進めていくとともに、食品用途のものについてはその安全性についても確認・検証することが重要です。

 

本共同研究について

本研究成果は、20224月に「食品化学学会誌」に掲載されました。詳細は本誌(注5)をご覧ください。

 

 

(注1)環境省ホームページ:「プラスチック資源循環戦略」の策定について(外部サイトへのリンク)

(注2)PETボトルリサイクル推進協議会ホームページ:PETボトルリサイクル年次報告書2021(外部サイトへのリンク)

(注3)株式会社Mizkanホームページ:食品4社で調味料・食用油用リサイクルペットボトルの安全性評価(外部サイトへのリンク)

(注4)厚生労働省ホームページ:食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用に関する指針(ガイドライン)について、食安発04272号、平成24427日(外部サイトへのリンク)

(注5)K., Kondo, R., Kozuka, D., Kuwagaki, A., Takahashi, M., Nagano, N., Hirano, K., Hirosawa, K., Sugiyama, A., Ozaki: Safety evaluation of PET bottles regenerated through mechanical recycling for use as liquid-seasoning and edible-oil containers, Japanese Journal of Food Chemistry and Safety, 29(1), 19-27 (2022)

 

 

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