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大阪健康安全基盤研究所

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水道水における農薬検査法の追加について

掲載日:2018年10月23日更新

地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所では、年々変化する検査項目に対応して可能な限り迅速にかつ多くの項目の検査が実施できるように新しい分析技術を開発しています。そして、これらの研究から得られた分析法を用いて大阪府内の水道水・水道原水のモニタリング調査(微量有機物質調査)を実施し、安全な水道水を提供するために必要な情報の収集に努めています。 水道水は水質基準に適合するものでなければならず、水道法(第4条)により水道事業体等に検査の義務が課せられています。また、水道水には水質基準以外にも水質管理目標設定項目(水質管理上留意するべき項目)や要検討項目(毒性評価が定まらない、あるいは水道水中での検出実態が明らかでないため情報・知見を収集するべき項目)が設定されています。水道水に含まれる農薬類は、水質管理目標設定項目に分類されています1。平成25328日の通知で農薬類の大幅な分類見直しが行われ、120種の農薬が対象農薬リスト掲載農薬類として分類されました2。その後、リストは更新され、平成304月時点で118種の農薬類が登録されています3)。水道事業体等は、このリストを参考にしてその地域で使用される農薬を選択して検査することとされています。リストに追加された農薬類の多くは、既存の農薬の標準検査法で対応可能でした。しかし、10種の農薬についてはリストに分類されたにもかかわらず、標準検査法が設定されていなかったため、水道事業体においては検査することが非常に困難な状況が続いていました。 平成27325日に上記10種のうち水中で速やかに分解するジチアノンを除いた9種の農薬(表)について標準検査法が設定されましたので、その概要を紹介します4。なお、ジチアノンは平成303月にリストから外れ、その他農薬類として分類されています3)。これら新規の検査法は、国立医薬品食品衛生研究所と東京都、兵庫県、大阪府の地方衛生研究所との共同研究により開発されました5

カルタップ、ピラクロニル、フェリムゾン

カルタップ、ピラクロニル、フェリムゾンは、直接注入-液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)法によって測定します。この方法では、検水の残留塩素を除去した後にフィルターでろ過したものを高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)に供して測定を行います。これまで、対象農薬リスト掲載農薬類の内13種類の農薬がこの分析法で測定されていましたが、新たにこれら3種の農薬が追加されました。カルタップは水中で速やかに活性体であるネライストキシンに変化することから、カルタップそのものを測定するのではなく、ネライストキシンを測定します6。そして、ネライストキシン濃度をカルタップ濃度に換算して評価します。

パラコート

パラコートは、固相抽出-LC/MS法によって測定します。この方法では、検水の残留塩素を除去した後、固相カラムに通水します。固相カラムとは、特殊な吸着剤等を詰めたカラムで、そこに検水を通すことにより、目的成分をカラムに吸着させます。その後、カラムに吸着したパラコートを少量の溶出液により溶出させることで目的成分を濃縮することができます。パラコートはガラスに吸着する性質があるため、使用する器具はすべてプラスチック製のものを使用することがポイントです。

グルホシネート

グルホシネートはそのままの形態では分析することが困難であるため、この検査法ではグルホシネートを誘導体化試薬を用いて検出しやすい形に変化させます。その後、この誘導体化されたグルホシネートを含む反応液を固相カラムに通して濃縮したものをLC-MSに供して測定を行います。

ダゾメット、メタム(カーバム)およびメチルイソシアネート

この検査法は、ダゾメットおよびメタム(カーバム)が加熱されるとメチルイソチオシアネートに変化することを利用しています。この検査法では、加熱により生成したメチルイソチオシアネートをパージ・トラップ-ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定します。

ジチオカルバメート系農薬

ジチオカルバメート系農薬は、塩酸と反応して二硫化炭素に変化します。この検査法では、塩酸と反応して生成した二硫化炭素をヘッドスペース-GC-MSを用いて測定します。

プロチオホス

プロチオホスは固相抽出-GC/MS法によって測定します。検水の残留塩素を除去した後、固相カラムを使って濃縮してGC-MSに供して測定を行います。そしてプロチオホスは、塩素処理により生成されるオキソン体を合算して評価するようになっています。ただし、この方法は、検査実施機関において必要な真度、精度又は定量下限を確保できない可能性が高い参考法として取り扱われています。

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参考文献

1)厚生労働省健康局長、水質基準に関する省令の制定および水道法施行規則の一部改正等について(健発第1010004号、平成151010日)
2)厚生労働局健康局長、「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等について」の一部改正について(健発03287から第9号、平成25328日)
3) 水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法の一部改正等における留意事項について水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について(平成151010日健水発第1010001号〔改正30328日薬生水発03281号〕)
4)水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について(平成151010日健水発第1010001号〔改正平成27325日健水発03253号〕)
5)平成25年度厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別研究事業「水道水質検査における対象農薬リスト掲載農薬のうち標準検査法未設定の農薬類の分析法開発(H25-特別-指定-034)」
6)吉田仁ら、水道協会雑誌、848)、2-72015 

お問い合わせ

衛生化学部 生活環境課
電話番号:06-6972-1353