シックハウス症候群と化学物質
掲載日:2019年3月5日
シックハウス症候群発症事例の減少の背景
住宅などの室内空気の化学物質による汚染が主な発症原因とされるシックハウス症候群が、1990年代後半から社会的な問題になりました。これまでに我が国では、1.「シックハウス (室内空気汚染) 問題に関する検討会」1) (以下、検討会) の設置、2. 化学物質の室内空気中濃度指針値を策定、3. シックハウス症候群の主要因と考えられる「ホルムアルデヒド」の建材への使用制限等の措置、などの対策がなされてきました。これらの対策により、規制された化学物質が原因となるシックハウス症候群の発症事例は減少するとともに、住宅に関する相談機関へのシックハウスの相談件数も減少しています(図)。※ 住宅リフォーム・紛争処理支援センター公表資料2) より作図
化学物質の室内空気中濃度指針値の見直し
室内空気中に含まれる化学物質の「濃度指針値」とは、「一生涯その値以下の濃度に曝露されたとしても通常は有害な健康影響がないであろうと判断される濃度」です。壁紙などの接着剤、塗料、シロアリ防除剤など建材が主要な発生源となる可能性が高い化学物質を中心に、順次濃度指針値が策定され、2002年までに13種類の化学物質が規制対象となりました。しかし、近年、化学物質の室内空気中濃度に関して、「規制対象外の化学物質の使用」及び「WHO (世界保健機関) の空気質ガイドライン等と我が国の濃度指針値との整合性」が新たな問題となっています。これらの問題に対応するため、厚生労働省は化学物質による室内空気汚染の実態を改めて把握し、濃度指針値の見直しを進めています。その中で3種類の化学物質(キシレン、フタル酸ジ-n-ブチルおよびフタル酸ジ-2-エチルヘキシル)については、毒性に関する新たな知見が得られたため、指針値がより厳しくなるように改定されました(2019年1月17日付け)3)。これらの化学物質は、以下の用途で広く使用されています。
◯キシレン:塗料の溶剤
◯フタル酸ジ-n-ブチル・フタル酸ジ-2-エチルヘキシル:可塑剤*
*樹脂などに柔らかくしたり加工しやすくしたりする目的で添加する物質
現在濃度指針値が設定されている13種の化学物質を表に示しました。
大阪健康安全基盤研究所の取組み
検討会では、諸外国における室内空気中化学物質の規制に関する情報収集を進めるとともに、国立医薬品食品衛生研究所と連携して住宅室内空気の汚染実態を把握する調査などを実施しています。当所も国立医薬品食品衛生研究所からの依頼を受け、同調査に協力しています。今後、これらの調査結果を参考にして、生活をするうえで居住者に影響を及ぼす可能性の高い化学物質について、新たに室内濃度指針値が順次策定されていくものと考えられます。1) 厚生労働省ホームぺージ:シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-iyaku_128714.html)
2) 公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターホームページ:住宅相談統計年報2018 資料編 (http://www.chord.or.jp/tokei/soudan_siryou_web2018.html)
3) 厚生労働省ホームぺージ:シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告書―第23回までのまとめ(https://www.mhlw.go.jp/content/000470188.pdf)
お問い合わせ
衛生化学部 生活環境課
電話番号:06-6972-1353
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